約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


「鴨ちゃん、お梅さん。
 今日も来たよ。

 これがねー私が住んでた、月の着物だよ。

 コテがあれば、もう少し可愛らしく髪の毛も
 セット出来るんだけどねー。

 この世界にはないから……」


鴨ちゃんが居たとき、私の世界を月の世界だと何度も
楽しそうに尋ねてきた。


だから毎日……ここに来て、
あの日までに語りきれなかった月のことを
もっともっと話してあげる。


だから……もう一度、声を聴かせてよ……。



あの場所では決して流れることのない
涙がこの場所でだけは頬を伝っていく。


そんな涙を隠してくれるように、
降り出す雨。


慌てて立ち上がった途端、
草履の鼻緒がちぎれて
そのまま後ろにひっくり返りそうになった。


それを背後から支えてくれた存在。



色白の髪を高く結い上げて流しているあの人。





沖田総司。






よりによって、どうして彼が今ここに居るのよ。



総司は……鴨ちゃんを殺した仲間なんだよ。


私から大切なものを奪った。



振りほどくように拒絶をするものの、
その腕は、私の手首を掴んで離さない。




「人殺しの癖に。
 私に何のようなのっ!!」



そう叫んだ途端、彼の手は力を失い
私の腕はすぐに解放された。



彼は……何も言わず、
ただ天を見上げて雨に顔を打ち付けられてた。




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