約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



……えっ?……



泣いてる?



まさか……。




その表情が何故かすごく寂しそうな気がして
その場所から立ち去ることも出来ず、
私もその場所で立ち尽くした。




雨は嫌い。




鴨ちゃんか旅立った、
あの日を思い出すから……。





「瑠花っ!!」

「岩倉」




声が聞こえた方を向き直ると、
舞ともう一人、新選組の隊士らしき男が
舞と共に行動する。


舞が私に抱き着いて、
雨除に、傘をさしだす。



決して、丈夫とは言えない荒竹の骨組みに
油紙を張り付けた単純なもの。


舞に差し出された傘に体を預けると、
沖田さんの方には、舞と一緒についてきたその人が
何か会話を交わしていた。



その人と会話をして何時ものように戻った沖田さんは、
またいつもの表情で私に向き合う。


「鼻緒、付け替えないといけませんね」



その場に座り込んだ彼はそれ以上は何も言わず、
修理を終えて、その場から立ち去って行った。


私も舞と二人、部屋の方に戻る。



びしょびしょに雨に濡れた制服を部屋で脱いで、
この世界で身に着けている着物に着替える。


濡れたままの制服を衣架にひっかけると、
部屋まで持ち帰った草履の鼻緒を見つめ続けた。
 


鼻緒を見つめながら思い出すのは、
空を仰いだ横顔。



泣いているように見えたその姿が、
今も焼き付いて離れない。



……どうして?……




沖田総司に憧れた時代は終わったんだよ。


あの人は鴨ちゃんを殺した。


なのにどうして、あの人の表情が
脳裏から焼き付いて離れないの?


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