約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


そんな私の背後、
今もちゃっかり感じる沖田総司の気配。



慌てて邸の中に駆け込むと、
近藤さんの部屋を目がけて走っていこうとするんだけど……
私には……、その部屋が何処かわからず、
その場で立ち尽くす。





そして、そのまま背後に今も付きそう
沖田さんの方を見つめる。




「どうかしたの?」




意味ありげに見つめた私に、
沖田総司は、呆れたように声をかけて言葉を続けた。



「おいで。
 近藤さんの部屋まで案内するよ」



そう言うと、私の横をスルっと通り過ぎて、
今度は私の前をトコトコと歩いて行く。


そんな沖田総司の背中をゆっくりと追いかける私。


その背中は、ピタリと立ち止まり
私の体は沖田総司の背中にコツンと触れた。



「あっ。
 ごめんなさい」



謝った私に無言で視線だけを送った後、
姿勢を正して、襖の前で声をかける。




「近藤さん、沖田です。
 岩倉瑠花を連れて来ました」

「総司かっ、入れ」




中から声が聞こえたのを確認して、
沖田さんが、静かに襖を開いた。




「失礼します」



そうやって、腰を折って部屋に入ると、
一番末席に正座する沖田さん。


「瑠花っ」


近藤さんと土方さんの前、
正座していた花桜が、私を振り返って名前を呼ぶ。


「花桜っ!!」



礼儀も何も考えずに、
その場で立ち上がると顔に抱きついた。


「お帰り……」


そうこうしてる間に、
舞と斎藤さんも部屋の中に姿を見せて、
舞も一緒に抱きつく。



また三人一緒に過ごせる。




そんな喜びを精一杯噛みしめながら、
再会の時間はゆっくりと過ぎて行った。




近藤さんの部屋での再会の時間も終わり、
それぞれがまた自分のやるべきことをするために
動き出した後、
今も私の背後をついて歩く沖田総司に
思い切って話しかけることにした。



壬生寺の境内へと歩いていって、
境内に続く木の階段に腰掛けてゆっくりと話を切り出した。



「ねぇ、聞いてもいい?

 嫌だったら、話さなくてもいいからさ。
 私……歴史好きなんだよね。

 私が過ごしてた時代は平成って言う年号でさ、
 徳川将軍家もなくなってる。

 沖田さんたち、皆のことは学校の授業とかで習うんだ。

 後は、TVのドラマ。

 私……ドラマや小説で描かれる新撰組の話沢山見たことあって……
 ずっと、沖田総司に憧れてたんだよ」

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