約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く




ずっと……そうだった……。





山崎さんは、
この世界に来てから最初に出会った人で……
いつも困ってた時には
助けてくれて……。



今も……こうやって……。







これって……まさか……。





「花桜ちゃん、何百面相しとんや?
 目、丸うして……」

「あっ……。
 えっと……」



続けようとして
なかなかな出てこない言葉。


そして近づく山崎さんの顔。



反射的に目を閉じると、
柔らかいものが、
私の唇に触れた……。





「花桜ちゃんの傍には、
 オレがおる。

 花桜ちゃんの嬉しい顔も、
 悲しい顔も全部オレに見せたらええ。

 涙が止まらんくなったら、
 オレが全部受け止めたる。

 近いうちに、オレらは
 戦いに出ることになるはずや。

 舞ちゃんにとっては、
 辛い時間になるやろ。 

 そんな舞ちゃんの傍におる
 花桜ちゃんも同じ位辛いはずや。
 
 それに花桜ちゃんには、
 山南さんの事もある。

 全部、抱え込まんでええんや。
 一人で全部、抱きしめてまわんでも
 オレもおるから……。

 花桜ちゃんのありのままの本音、
 全部吐き出しや。

 花桜ちゃんのことは、
 オレが何があっても守ったるから」





そうやって告げられて……
初めて……気が付いた……。




この言葉が初めて異性の人から貰った
告白だという事に。



山崎さんの優しい言葉は、
乾いた私の中に、浸透するように
奥の方まで沁み渡っていく。
 




その日……初めて山崎さんの腕の中に
自分の意思で飛び込んだ。




その胸の中で……思うままに吐き出して、
涙を流す。






涙を流す度に強くなれるって言葉があるけど、
私も……今よりももっと強くなりたい。





大切な人を守れるように。





昨日よりもっと笑顔になれるように。







「山崎さん……有難う」

「なんや、花桜ちゃん。
 まだ山崎さんかいな。

 オレの事、丞って呼んでくれんのか?」




なんていつもの調子なのに、
やっぱりいつも以上に優しさが伝わってくるのは、
鈍感な私が……この思いに気が付けたから?




その日、山崎さんと一緒に
再び向かった、山南さんの部屋。





その部屋に……彼の姿はなかった。




その後、山崎さんも監察の仕事へと
すぐに戻ってしまって……
舞と二人、剣の稽古をしながら過ごした昼時。


夜が近づくにつれて、
騒がしくなっていく屯所内。



あの有名な池田屋事件が、
目前にまで迫ろうとしているなんて
思いもしなかった。
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