約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


「花桜……、まだ舞には話してないけど
 私も覚悟決めたの。

 話さないで後悔するより、
 話した方がいい。

 だって私は未来の歴史を知ってるんだもの。

 知ってるだけじゃ、
 どうにもならないかも知れない。

 未来を伝えても、
 鴨ちゃんはその未来を受け止めて
 自分の覚悟を通しちゃった。

 鴨ちゃん、傍に居てめちゃくちゃだって
 思ったけど……今は、 あれは鴨ちゃんだから
 出来た生き方なのかも知れないって思えるようになった。

 不器用な鴨ちゃんが教えてくれたこと。

 自分の意思を真っ直ぐに貫くこと。

 だから私も、貫きたいって思った。
 歴史が変わることに怯えてた。

 私が伝えることによって、
歴史が変えられて、
 生まれるはずだった命が
 遠い未来で消えてしまってるかも知れない。

 でも……遠い未来に怯えるより、
 私は総司が愛する皆を守っていきたいから。

 鴨ちゃんが託した新選組を守りたいから」
 


そう。


私一人の言葉が、
どれだけ威力を持つかなんて
誰にもわからない。



変わるかもしれない。

変わらないかもしれない。



だけど知っているのに、
ただ黙って傷つくのを見守り綴るなんて
私には耐えられないから。



「瑠花、私もずっと考えてた……。

 私たちがこの世界に来た理由。
 そんな難しいものじゃないのかもしれない。

 大切なものを探す旅の途中。
 そう考えたら、今のこの生活も
 受け入れられる。

 瑠花には沖田さんが居て、
 私には……やっ……
 すっ烝が居て……」


烝さん?


今、花桜そう言った。


「何々?

 花桜、もう一度言ってみな。
 なんて言ったの」


からかうように切り返すと、
花桜は真っ赤に顔を染めながら、
『山崎さん』っと
元の言い方に戻っちゃった。



「ごめんごめん。

 そして、舞の傍には進展具合はわかんないけど、
 斎藤さんが居るってわけか。

 なんか、それぞれこの世界の居場所
 見つけはじめたみたいだよね」

「そう。

 だから……その日が来るまで、
 この世界で精一杯生きてみたいって
 思ったの」





その日が来るまで……。



私たちが三人揃って、
元の世界に帰るその日まで。





「うん。
 そうだね……。

 その前に、乗り越えないといけないのは
 池田屋事件。
 
 多分……、今騒々しくなってるこれが
 アレだと思うんだよね」



そうやって告げると花桜もまたゆっくりと
顔を近づけて頷いた。




「この日……沖田さん倒れるんだよね」




思いつめたように
言いづらそうに小さく告げる花桜。

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