約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



「人を斬るしか手段がないなら
 迷わず、この沖影を振るいます。

 私はこの世界に生きていくことを
 決めたから。 

 お二人が許可をしてくれなくとも、
 私の決意は変わりません。

 邪魔なら、足手まといなら
 私事斬り捨ててください」




そうやって言い切った花桜に
目の前の土方さんは少し笑ったような気がした。



「歳の許可も出たみたいだな。

 山波くん、歳の傍で君がやりたいように
 見届けなさい。

 ただし、危ないことはしないこと」



危ないことはしないことって、
近藤さん。


刀持って斬りあいにいってる事態
すでに危ないじゃん。



そんな突っ込みも出来るわけもなく……。




「岩倉くんだったね。
 君の話は?」



次に向けられた話題。



話さなきゃ。



話すことが私の戦。




「近藤さんも土方さんもご存じの通り、
 私と花桜と舞は、未来から来ました。

 未来にはこの世界の時を綴ってる書物が
 沢山あって、貴方たち新選組も凄く人気なんです。

 アニメとかテレビドラマとか。
 って言ってもわかんないかも知れないけど、
 新選組をテーマに作られた作品が数多くあります。

 つまり、この時間に起きる出来事を私たちは知ってるんです。

 これから起こる出来事は後の世で『池田屋事件』として
 伝え残るものだと思います。

 監察方の人たちが調査しているのは池田屋と四国屋。

 違いますか?」



ゆっくりと切り出した私に、
土方さんの表情がビクリと一瞬強張った。



「彼らが会合をするのは池田屋。

 当初、部隊を三分していた為池田屋に真っ先に入るのは、
 近藤隊。

 近藤隊は、土方隊・松原隊が到着するまで
 激戦状態になります。

 その中で、藤堂さんは額を斬られる大怪我する。

 近藤さんも何度も危機的状況に陥ることになる。

 そして……総司も……沖田さんも倒れる。

 
 新選組側も沢山の死者や負傷者が出るんです。
 そんな命を守りたいから。

 だから……」




そうやって必死に伝える私に、
花桜が肩にそっと手を添えてくれる。


震えだす体が、
花桜の温もりで少しずつおさまっていく。



「悪いが、その未来に確証は確か?

 俺たちの知らない遠い未来を
 経験してきたのかも知らねぇ。

 だがその事実が必ずしも起きるとは
 限らねぇんじゃねぇか?

 現にお前たちが来たことで、
 狂い始めた事実もあるんだろう?」




そう問い詰めるように吐き出された言葉に
私も花桜も言い返せる言葉が見つからなかった。


< 177 / 251 >

この作品をシェア

pagetop