約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



胃がひっくり返りそうになって
吐き気が込みあがってくる。





手を洗わなきゃ。

着物を洗って綺麗にしなきゃ。







何かに取りつかれたように、
中庭の井戸に駆け込もうと立ち上がった私の腕を
軽々と強い力で掴む土方さん。







「やっ、やめてください。

 私は……井戸に行かなきゃ」





必死に抵抗する私を逃がさないように掴んだまま、
その人は言い放つ。




「山波、今日の稽古はどうした?

 俺が直々に見てやる。
 今から道場に来い」



そのまま土方に引きずられるように
道場に連れて行かれて、
放り込まれると続いて木刀を投げつけられる。


木刀は受け取られることもなく、
私の近くで、コロコロと音を立てて床に落ちる。



「山波、どうした。
 木刀を取って立ち上がれ」



途端に怒鳴り声が道場に響く。




私は言われるままに木刀に手を伸ばして、
何とか構えた途端、土方さんが木刀を振り上げて
斬りつけてくる。




逃げることも、避けることも出来ないまま
体に木刀の痛みを受け、縺れた足をどうすることも出来ずに
その場に倒れこむ。







そんな時間は何度も何度も続いた。









私が意識を手放す、
その瞬間まで……。
















消えない血の残像を
一人でどうすることも
出来ぬまま
暗闇の迷宮を彷徨いつづけていた。






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