約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く





自分でもどうしていいかわからない感覚。






だけど……池田屋事件についていくことも、
この世界で生きて行くという事も
全部、自分自身で選んだ道。



その道が辛いからといって、
誰かに甘えを吐き出すことも出来なかったし
したくなかった。




『小娘の覚悟はその程度かよ』って
斬り捨てられそうな恐怖もあったし、
瑠花にも心配かけたくなかった。




瑠花は沖田さんのことだけ今は
考えていて欲しい。




私の事なんて、
気にしなくてもいいから。









あの日から、そんな毎日が続く。









ただ何も出来ないまま、
もがき続けて、日だけが過ぎていく
一日がとても長い日々。





一人になるのが怖くて、
夜になるのが怖くて、
やるべきことがなくなるのが怖くて。





真っ赤に染まった着物と、
掌に流れる紅い血が怖くて。







気がついたら井戸水を汲み上げて、
同じことを繰り返し続けてた。








そうしないといけないような気がして。






「花桜ちゃん、カンニンな」






何度か山崎さんのそんな声を聞いて、
気が付いた時には、
自分の部屋の布団の中で
目が覚めてることが何度かあった。







熱っぽさや体のだるさを感じながらも、
その場で休み続けることも出来なくて
やるべき何かを探して、
ふらふらと屯所の中を彷徨いつづける。





「山波ふらふらしてんじゃねぇ。
 目障りなんだよ」


そんな私の前に立ちはだかって、
キツイ声をかけてくるその人を
ゆっくりと見上げて視線を見つめる。



「ひ……土方さん?……」

「土方さんじゃねぇだろ。
 お前、刀の手入れはしたのか?
 刀は武士の命だ。

 池田屋以来、手入れをしてないなんていわねぇだろうな」






手入れ?



池田屋?







脳裏に鮮明に蘇ってくるあの日の感覚に、
頭を抱えて、私はその場に座り込んでいく。

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