約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



「舞っ!!出陣が決まった

 長州勢力が山崎天王山、八幡、伏見、嵯峨天龍寺に布陣したって。

 どうするの?
 見届けるの、逃げるの?」





突如、沈黙を遮るようにもたらされた瑠花による一報は、
私が恐れつづけたもの。




震えだす手を必死に握りこぶしを作って
やり過ごしながら、私はその場から立ちあがる。



大切な義兄の最期を見るのは嫌。


だけど……この場所で全てから逃げて
何も知らない間に義兄の命が散って行くのはもっと嫌。


もし叶うなら、最期の最期くらい私が抱きしめて
穏やかに眠りについてほしい。


その為なら……私は戦場(いくさば)にだって
駆け出して見せる。



大切な人を守るために。




「瑠花、決めた。
 私、出かけるよ」



そのまま私は新選組の隊士たちとともに
屯所前に集まる。
 


「加賀、見届けるのか?」


全てを見透かしたように、
問われた斎藤さんの言葉に私は頷き返す。



「そうか……。
 ならば、これを持って俺の隊に加われ」


手渡された一振りの刀。
真剣の重みが感じられるやや小振りの刀。


「俺の傍から離れるな」


それだけ言うと言葉少なに、
他の隊士たちへと指示を出しに移動していく。


手渡された刀を腰元に差し込んで、
ゆっくりと抜き放つ。


初めて持つ刀なのに、しっくりとはまる感覚が
私を満たしていく。


「会津より新選組に出陣の命がくだった。
 これより我らは御所の警護に会津藩・薩摩藩と共にあたる」


近藤さんの声が力強く響くと同時に、
新選組の旗が空へと風を受けながらたなびく。


屯所から、隊列を組みながらゆっくりと
出陣していく。


視線の先に、また体調が回復していないかもしれないと
今回の出陣を許して貰えなかった沖田さんと瑠花。



この先に続く未来は義兄の死。


その未来を抱きとめて、
私は乗り越えて見せるから。


決意の行方を抱きしめて。
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