約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


山南さんの言葉に導かれるままに、
ただ無心に花舞風をふるい続ける。


心を無にして、神経を研ぎ澄まして
刀の切っ先の方へと神経を集中させていく。


時に剣舞をするように
時に流れるような教えらたれ型にのっとって……
一心不乱に振り続ける刀。


体温が上昇して、心拍数が弾みだす。

段々と汗が噴き出して刀を持つ手が、
汗で滑りはじめる。

息がいい感じに弾んでこれからっと思えたとき、
お稽古の終わりを告げる、山南さんの声が道場に響き渡る。


慌てて、刀を振るう腕を止め刀を鞘へと納めると、
居住まいを正して今日の師匠である、山南さんの前に正座して深く一礼する。



どうしてだろう。





稽古をつけてくれているのは山南さん。




初めての稽古のはずなのに、何故か懐かしくて。



お祖父ちゃんに稽古をして貰っていたような
暖かな感覚が私を包み込んでた。




「明日もこの時間、この場所で。

 山波くん、斎藤くんが言った通り君の開花が私も楽しみですよ。

 普段使わない筋肉を酷使しているでしょう。
 明日に備えなさい」


その場を立ち去ろうとした山南さんに、
花舞風をお返ししようと声をかけた私に、
山南さんは柔らかに微笑んだ。



「刀は武士の命ですよ。

 この世界に生きる覚悟をした貴女だからか
 私も貴女を信じることにしたのです。

 この世界の武士として生きるならばその刀は必需品でしょう。

 どうぞ、貴女の元におさめなさい」



それだけ紡ぐと山南さんは、
道場を後にしていった。


道場の床に大の字になって転がる。


大きく伸びをして寝返りをうって起き上る。

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