約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


あぁ~気持ちよかった。



そのまま、花桜は掃除へと戻らず瑠花の部屋に赴いていく。


瑠花は何があったのか、わからないけど、
いつもの日常を取り戻してくれていて、
それが私には嬉しかった。



「花桜、それ……」



瑠花は、私の刀に気が付く。


「うん。
 本物だよ。

 覚悟を決めたから……。

 私、この世界を精一杯生き抜くって決めたから」




その言葉の意味が、
どれだけ重いか、同じ思いをした瑠花にはすぐに伝わって
瑠花は何も言わず、黙って私を強く抱きしめた。



「花桜。
 聞いて……私も決めたよ。
 私は、この世界に生きた漢(おとこ)たちを
 絶対に忘れない。
 全部見届けるから……。

 どんな歴史も全部、
 受け止めて見せるから……」




ゆっくりと自分に言い聞かせるように紡ぎたした言葉の後、
抱き寄せた私の腕の中で声を殺して涙を流した。


私と違って、歴史が大好きで聖地めぐりをしてる瑠花の覚悟。


泣くだけ涙を流して、少し落ち着いた瑠花が、
私ににっこりと笑いかける。


目には涙をいっぱいに溜めたままで。



「鴨ちゃん……さ……。 
 私が言う前に知ってたのかも知れない。

 鴨ちゃんに言ったの。
 これから起きる歴史を。

 鴨ちゃんが死んじゃうこと。

 そしたら……言われちゃったの。
 『お前は俺の夢が叶う時を笑って見送れ』って。

 そんなこと言われちゃったら、私のエゴで、
 鴨ちゃんの覚悟を断ち切るなんて出来ないじゃない」



そう言いながら、私をキツク握りしめて
瑠花はかみ殺すように体を震わせていた。


そんな瑠花と、もう暫く支え合って、
私はいつものように瑠花の部屋を後にする。



その日も庭の茂みから瑠花を見つめる
沖田さんの姿を見つけた。


そして……その夜、屯所内は慌ただしくなった。



近藤さんが、会津さまに呼び出された。


歴史は今も止まることなく時を刻み続け、
私たちを容赦なく、この幕末の歴史の渦の中へと
巻き込んでいった。

< 88 / 251 >

この作品をシェア

pagetop