華麗なる偽装結婚
パタパタと如月 紫織が足早に広間を出ていく。
じいさんは楽しそうに笑いながら阿美子に近付いて行った。
「阿美子さん、私は孫とは忙しさから疎遠な日々を送っていましてな。
色々お話を聞かせてもらえないだろうか」
俺は耳を疑いながらじいさんを見た。
そこにいたのは、子孫を貶める悪意に満ちた心など微塵もないような、
……優しい素顔の祖父だった。
…………!
「はい。喜んで」
阿美子がじいさんに笑いかけた直後に、部屋の隅に控えていた楽団が音楽を奏でる。
「おお。ワルツか。
阿美子さん、この老いぼれと一曲踊って下さらんか。
怜、大切な人をお借りしてもよいかな?」