愛を教えて
とはいえ、当の万里子から『結婚』の言葉を聞き……。


「なんで……いきなり、こんなことに」


小さな声でしばらく呟いていたが……。

しばらくして、隆太郎は声を大きくした。


「とにかく! 正式な婚約や結婚は、万里子が大学を卒業してから、ということにしましょう。それで、今日はもうお引き取り願います」


娘がその気であるなら、父親に残された手段は時間稼ぎしかあるまい。しかし、それは卓巳の事情が許さなかった。


「いえ、結婚はできる限り急ぎたいと思います」

「どうしてそんな……まさか!?」


この場合、想像することはひとつだろう。隆太郎の視線は万里子の腹部に向かった。


「あ、いえ……そんな、そうではなくて……あの」


万里子はなんと答えていいのか困った様子で卓巳を見つめている。

だが、この誤解はわざと与えたものだ。


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