愛を教えて
卓巳は咳払いをひとつすると、


「恥を承知で申し上げます。実は――昨夜、万里子さんを妻にしました。何も気を配るようなことはしませんでしたので、万一の可能性はあります。僕だけならかまいませんが、彼女に恥を掻かせたくはありません。順番が違わぬよう、すぐにも挙式、入籍と考えております」


とんでもないことを口にしているせいか、さすがの卓巳も薄っすらと頬を染めていた。


(宗が見たら、芸が細かい、とか言い出すんだろうな……)


そう考えると、余計に恥ずかしくなる。

そんな卓巳に合わせて万里子の頬もピンク色に変わった。それに気づいたとき、卓巳の気持ちは更に高ぶり……。 


「け、結婚の、了解も取らずに、嫁入り前の娘に」


高ぶるどころで済まないのが父親の心境だ。


「待ってお父様! 卓巳さんのせいじゃないんです。私も……私もそう望みました。卓巳さんの妻になりたかったんです! 許してください」

「馬鹿者っ! なんて軽はずみな真似を。藤原家には会長もおられるんだぞ。中堅企業の娘なんぞ、嫁にはできんと言われたらどうする気だ!?」


隆太郎は怒り心頭の様子で立ち上がった。


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