愛を教えて
卓巳と違って、太一郎は怒らせたところで大したことはない。
藤原の名前を使って、やりたい放題しているだけの悪ガキだ。

しかし、やり方は卑劣で、充分に犯罪者のレベルだったが……。


若いメイドのほとんどは、この男に無理やりベッドに引き摺り込まれている。
彼女たちは、最初は『レイプ同然』と怒っていても、月に数回相手をするだけで毎月十万程度の手当てが付くことを知れば、ほとんどがおとなしくなる。

ただ、あずさは例外で、自分からベッドに入った。

太一郎の見た目は悪くない。
長身の卓巳より更に数センチ上背があり、スポーツマンで通る立派な体格をしていた。
祖父、高徳の血が色濃く出ていて、やんちゃな少年がそのまま大人になった、という印象だ。

そして、こういったイメージに弱いのが、得てして世間知らずのお嬢様だった。

マスコミ嫌いの卓巳を叩くため、週刊誌には――祖父から後継者に指名されたが年齢が若過ぎた悲運のプリンス――と太一郎を不自然にも持ち上げる。

それを真に受けた令嬢たちが何人も彼の毒牙にかかってしまい……。



「聞いたわよ。婚約の決まってた代議士のご令嬢に手を出したんですって? さすがの卓巳もかなり怒ってたそうじゃない」


令嬢のほうが本気になり『婚約はしません。太一郎さんと結婚します!』と親に訴えたという。
尚子はその令嬢との縁組みを本気で考えたようだ。
だが、相手は代議士になるほどの人物。太一郎に大事な娘をやれない、とキッパリ断られた。
逆に、卓巳が代わって責任を取るなら、とねじ込まれ、卓巳は多額の慰謝料を支払ったと聞く。


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