愛を教えて
そう言った瞬間、太一郎は弾けるように笑った。


「馬鹿言うんじゃねぇよ。あの役立たずが結婚だって? どんな金目当ての女だよ」

「さぁね。でも、幼稚園から大学まで、あんたの大好きな聖マリアですって。卓巳のアソコが役立たずなら、間違いなく処女でしょうね」


あずさの言葉に、太一郎の目の色が変わった。


「ふーん。ちょっと、挨拶してくっかな」

「挨拶したいんなら、そこを曲がった客用のレストルームにいるわ。くれぐれも挨拶だけにしておくのね。――挨拶だけ、にね」

「当たり前だろ? こんな昼間に何するってんだ」


太一郎は口を尖らせながら、いそいそと万里子のいるレストルームに向った。

あずさはその背中を見ながら小声で悪態をついた。


「昼夜お構いなしにサカッてる、万年発情オトコがよく言うわ!」 


卓巳と結婚するなら、この邸で暮らすのは間違いない。
太一郎ともどうせ顔を合わすのだから、それが多少早まっても問題はないだろう。

そう、たとえレストルームで何が起こっても、それはあずさのせいではない。


「偽善よ偽善。……あんな女、メチャクチャになればいいんだわ。いい子ちゃんの仮面なんか引っ剥がしてやる!」


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