愛を教えて
「な、なんて乱暴なんでしょう。あ、あたくし、信じられませんわ。社長ともあろう方が、こんな……」


尚子もやっと口を開く。
同時に卓巳に睨まれ、いつもの嫌味を口にすることなく、硬直してしまった。


「育ちがよくないもので、何卒ご容赦ください。おばあ様、万里子に二階を案内してきます。よろしいですか?」

「お待ちなさい。――太一郎さん、初対面の女性にすべき挨拶ではありませんよ。万里子さんに謝罪なさい」


ブスッとしたまま立ち上がった太一郎を、尚子は脇から『皐月様を怒らせるんじゃありません!』といわんばかりに肘で突き、太一郎はしぶしぶ謝罪した。


「悪かったな」


万里子は卓巳の後ろに隠れたまま、ビクッとして首を左右に振る。


「今度は卓巳さんの番です。乱暴はよくありませんよ。太一郎さんに謝罪なさい」

「断ります。夫になる者の義務として、彼女を守っただけです。もし、また同じようなことをしたなら、今度はこの程度では済まさない。――失礼します」


卓巳が皐月に向かって、ここまでキッパリと『ノー』を口にしたのは初めてのことだ。
言われた皐月も目を見開いている。


「あの……卓巳さんに代わって、私がお詫びします。申し訳ありませんでした」

「万里子!」

「やはり乱暴は間違っていると思います。あんな真似はもうなさらないでください。お願いします」


それでも卓巳は、太一郎に対して一切の詫びは口にせず。
万里子の背中を軽く押すように、食堂を後にした。


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