愛を教えて
尚子のあけすけな物言いに、万里子は真っ赤になりうつむいた。


「いい加減にしてください! お話なら私が伺います。万里子にそんな質問はしないでいただきたい!」


卓巳はついに尚子を怒鳴りつける。

しかしそれは、初めて見せた卓巳の動揺だった。


「何を今更。初めて訪れた家で、二時間も男の寝室にこもるような方ではないの」

「わたくしもお姉様の意見に賛成ですわ。卓巳さんがお嫌だと言うなら、万里子さんに証明していただいたらよろしいじゃありませんか」


勝ち誇ったように笑うふたりに、卓巳は舌打ちした。

卓巳自身は慣れたものだ。だが、万里子にとっては違う。一刻も早く、この家から連れ出さなければならない。
そのためなら――。


「わかりました。どうぞ、お好きに思っていただいて構いません。では、失礼いたします」


卓巳は皐月に向って一礼した。
そして万里子の腕を掴み、ガーデンルームを出ようとした――そのとき。

卓巳を引き止めたのは、蚊の鳴くような、小さな声だった。


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