愛を教えて
――あまり食べない。


そう言おうとしたら、万里子の表情が一瞬で曇った。
卓巳は大慌てて訂正しつつ、手作りのマドレーヌを口に運ぶ。


「初めて食べる味だな……美味しいよ」

「無理なさらないでください。形も不揃いですし……」

「いや、本当に美味しい。手作りのお菓子なんて一度も食べたことがなかったからね。ケーキも作れる?」

「ええ、大好きです! あ、作るのも、食べるのも」


甘い物が好きだと言う割に太ってはいない。
そんなことを考えながら、視線が万里子の胸や腰に向くのは、どうやら、悲しい男のさがらしい。
自分にそんなものがあったことに、卓巳は深い感慨を覚えつつ……。


「僕は十二月が誕生日なんだ。リクエストしておくよ、イチゴのケーキがいいな」

「あ、はい!」


(我ながら……変われば変わるものだ)


万里子の打てば響くような返事に、卓巳は喜びを感じる。


「頑張って作りますね。でも、一度も……って本当ですか?」


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