愛を教えて
笑顔で話していた万里子の瞳から、ふいに大粒の涙が零れ落ちた。


「ごめんなさい。あのあと、色々あって……今はもう、そんな夢は見ていません。もう、そんなことは不可能だし……幸せな結婚なんて」


万里子の気持ちが誰にあったとしても、彼女は卓巳の妻だった。
そして、二日後には結婚式を挙げる。

それを思うと、幸せな結婚はできない、と泣く万里子をそのままにはしておけなかった。

卓巳は万里子の腕を取り、自分の胸元に引き寄せる。

そして、思いのたけをぶつけるように、力いっぱい抱き締めた。


「不可能じゃない。君は僕の花嫁になるんだ。誰よりも幸せな花嫁にしてやる。だから……泣くな」


一瞬、万里子の身体が強張った。

卓巳は押し返されるのか、と身構える。

しかし、卓巳の耳に届くかどうかの小さな声が聞こえて、


「……たくみ、さん……」


万里子の手が卓巳の背中に回り、ギュッと抱きついた。

卓巳の胸に顔を埋め、万里子は肩を震わせて泣いている。


――愛しい。


際限なく膨らむ思いに、収拾がつかなくなる卓巳だった。


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