愛を教えて
「僕は大丈夫だ。気にしなくていい」


卓巳の声がソファのほうから聞こえる。

泣きじゃくる万里子が落ちつくまで、卓巳は抱き締めていてくれた。
そして、万里子がお風呂から戻ってきたときには、部屋の電気は消え、卓巳はソファに横になっていた。


「卓巳さんはお客様なんですよ。それに、明日も朝からお仕事でしょう? ちゃんと休んでくださらないと」


万里子がソファに寝るから交代して欲しいと言っても、全く聞き入れてもらえない。
ならば客間に、と勧めるのだが、父や忍に嘘がばれると言って卓巳は断る。

困り果てて、万里子は思わず言ってしまった。


「じゃあ……私の隣で休んでください」

「隣?」

「はい。隣で」

「同じベッドで休もうと言ってるのか?」

「……はい」

「僕を誘ってるつもりか? 悪いが僕は」


卓巳の勘違いに気づき、万里子はカッとなる。


「違います! 卓巳さんなら約束は守ってくださるって思っただけです。ひとつのベッドで寝ても、きっと……。もういいです。明後日が結婚式なんですから、風邪なんかひかないでくださいね。おやすみなさいっ!」


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