愛を教えて
「えっ、どうして?」


できる限り、幸せそうな新妻を演じているつもりだ。
ふたりの本当の関係を、人に知られる訳にはいかない。皐月のためにも。


「卓巳さんは相変わらず優しいし、夫婦仲も問題なしよ」


卓巳のように、堂々と嘘をつくことはできない。
案の定、雪音は不審そうに万里子を見ている。


「そう……ですか。まあ、そうですよね。すみません、変なことを言ってしまって」

「誰かに何か言われたの? おばあ様とか」

「いえ。なんでもありません。気になさらないでください」


どうやら雪音も万里子と同じで、嘘の苦手な性格らしい。
ふたりとも急に黙り込み、そそくさと飾りつけを済ませようとした。


――そのとき。


「なんでもないですって? どうして本当のことを教えて差し上げないのかしら」


口元にいやらしい笑みを浮かべ、立っていたのは、あずさだった。


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