愛を教えて
万里子を背後に庇い、雪音は受けて立つ姿勢だ。

腰に手を当て、自慢の胸をグンと突き出して威嚇するあずさと、腕を前で組み、斜め視線であずさを睨む雪音。

体格で言えば、細身の雪音のほうが不利に見える。だが、いくらなんでも殴り合いを始める訳ではない。
口達者なのはどちらもいい勝負のようだった。


「あら、やけに万里子様を庇うじゃない。卓巳様からいくらもらってるの? 取り入るのが上手い女ね」

「あなたには負けるわ。ろくな仕事もせず、子守してるだけで同じ給料なんだから」

「子守ですって?」

「ベッドで大きな坊やを寝かしつけるのが仕事でしょう?」


雪音はフフンと鼻で笑う。
怒り狂うあずさを想像したが、意外にもあっさりと開き直った。


「だから何? カカシみたいなあんたじゃ勃たないって、太一郎が言ってたわ。卓巳様には、あんたくらいがちょうどいいのかもね」

「フン! 淫売」

「他の連中も同じようなもんじゃない。伝えといてあげるわ、みんなにもね」


あずさの言葉に今度は雪音が閉口する番だ。

きっかけはなんであれ、若いメイドのほとんどが尚子から金をもらい、太一郎と関係している。
尚子にすれば、外で羽目を外されるよりましなのだろう。

一方、メイドのほうにも、お手当て以外の目的があった。


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