愛を教えて
住み込みのメイドとなると勤務時間が長い。
加えて、邸内には簡単に持ち運びできる高価な調度品や美術品が多数ある。そのため、使用人の出入りはチェックが厳しかった。

夜の十時を回ると外出は認められておらず、友人も呼べない。
若い女性にとっては窮屈な環境だった。

だが、手段がない訳ではない。
家人の外出は制限されていないので、夜中に出歩く太一郎や静香の車に同乗すれば、楽に出入り可能なのだ。

だが、そのためには彼らの機嫌を取らねばならない。



「でも、おかしいのよねぇ。あんたも結構、外に出てるでしょ? いったいどんな手を使ってるの?」


あずさの質問に、雪音は答えるつもりがないようだ。


「ひょっとしたら、敦様の愛人だったりして」

「あんたと一緒にしないでよっ!」


吹き抜けのエントランスホールが、険悪なムードに包まれていく。

万里子が手にしたままの、ツリーの天辺に飾られる天使が、困った顔でふたりを見つめ……。


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