愛を教えて
卓巳は自分も生クリームのホイップを手伝ったことなど、面白おかしく話した。

そして話は新婚旅行に移り……。


「ヨーロッパの……確かイギリスでしたかしら? 何週間も行かれるのですか?」

「仕事もあるからね。合わせて二週間程度かな」

「まあ、こんなときまで仕事だなんて! 卓巳様も大変ですわね。でもその間、万里子様はおひとりで?」

「いや、なるべく同行するつもりだ。レセプションと挨拶回りだからね」


万里子がひとりで放って置かれることはないとわかり、忍はホッとしたような笑顔になる。


「それはようございました。勝手のわからぬ外国で、しかも新婚旅行中におひとりなんて……寂しいですものね」


話が途切れたところを見計らい、卓巳はブリーフケースの中から茶封筒を取り出した。
そして、その中から抜き出した一枚の紙をテーブルの上に置く。


「忍さん、これを見て欲しいんだが」

「まあ、なんでございましょう」


その瞬間、忍の顔色が変わる。


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