愛を教えて
「万里子、君が許しても、誰もこいつを許さない。少なくともこの家に、太一郎の居場所はない」


卓巳に言われ、万里子は周囲を見回した。
誰も万里子と目を合わせようとはせず、横を向いていく。


「でも、二度としないって言ってくれました。もう二度とこんな真似はしないって」

「信じられるか! 君が優しいのはわかる。だが、この男はまたやるぞ。暴力で君のような……いや、君以上の目に誰かを遭わせる」


その言葉に万里子は卓巳の本心を垣間見る。

卓巳が見せる恐ろしいまでの怒りは、太一郎だけにぶつけられたものではないのだ、と。


「わかったかい、万里子。確かに、命で責任を取らせるような言い方は間違いだった。僕の言い過ぎだ、訂正する。だが、この男だけは許せない。この家から追放し、二度と敷居は跨がせない。そのほうが君も安心だろう?」


そんな卓巳に、万里子は静かに首を横に振った。


「そしてあなたも、おじい様と同じ間違いを犯すの? たったひと言『許す』と言えば済むことなのに」


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