愛を教えて
「心からの反省と謝罪があれば……私は許します」



太一郎にはなんと答えたらいいのかわからず……。

黙って立ち上がり、ベッドに潜り込んだ。そして布団を頭から被る。


「出てけよ……いや、卓巳は知ってんのか? いいのかよ、俺なんかに言って。もし、言いふらしたら」

「もちろんご存じよ。人には知られたくないけど……でも、無理じゃないってわかって欲しかったの。それに、たとえ何があっても、卓巳さんならそばにいてくださるから、私は平気よ」


ひゅうっと音を立てて入ってきた風が、カーテンをはためかせた。

万里子もさすがに寒いと思ったのだろう。窓を閉める音がした。


「出て行ってくれ」


布団の中から太一郎が言う。酷くこもった、聞き取りにくい声だった。


「わかりました。でも、メイドに掃除とベッドメイクに来させます。食事もちゃんと食べてくださいね」


太一郎は返事をしなかった。

万里子の足音が遠ざかる、そのとき――。


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