愛を教えて
卓巳の父、卓哉《たくや》は先代社長の妻、皐月《さつき》が産んだひとり息子だった。

卓哉には腹違いの妹がふたりいる。認知されていても愛人の娘なので相続権は卓哉の半分。

祖父が亡くなったとき、遺産の半分は妻の皐月が、四分の一を父の代襲相続で卓巳が、八分の一ずつを卓巳の叔母ふたりが相続する。というのが法律上の決まりだ。

しかし、祖父は遺言状を作成しており、そのほとんどを妻の皐月が相続した。


「会社のためだ。資産を分散してしまうと社長の力も弱くなる。いざというとき、会社がバラバラになってしまう」


卓巳の説明に万里子はうなずいた。

彼はホッとして説明を続ける。


現在、藤原グループの会長は皐月で、全権を彼女が握っている。皐月に万一のことがあっても、叔母たちに相続権はない。最終的に、祖父の遺産の四分の三は卓巳の名義になる。

これは法律で定められたこと。

ところが、ひと月前、祖母はいきなり卓巳の相続に条件を付けたのだ。


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