愛を教えて
それは先日、万里子が太一郎の部屋を訪れた際の写真である。

庭から撮ったもので、万里子はカーテンの横に立ち、半裸の太一郎はベッドにいた。

そして、もうワンショットが……ベッドに仰向けになる女性の上に圧しかかる太一郎の姿。

女性の顔は見えない。だが、その服装は明らかに万里子だった。

他は、全裸の女性がベッドに座っている写真や、まるで男がセックスの最中にふざけて撮ったような写真まで一枚の紙に掲載されていた。男に跨り、裸を晒した女の顔を、あろうことか万里子に入れ替えている。

繋ぎ目も雑で合成だと誰でもわかる。
だが、本物を混ぜることで、嘘を真実に見せてしまう騙し絵のような効果があった。


卓巳はふいに立ち上がり、その写真付きの怪文書をシュレッダーにかけた。

終始無言である。

そんな卓巳の様子に、宗のほうが心配になる。


「犯人ならすぐに調べ上げますが」

「どうせ邸の人間だ。放っておいても尻尾を出す」

「万里子様のことは……」

「これは妻の身体じゃない。私が一番よく知っている」

「なら、よろしいのですが」


このとき、宗は妙に冷静な卓巳の様子に、逆に不穏な気配を感じたのだった。


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