愛を教えて
「え? あ、あの」


驚く雪音の様子が、殴り合うふたりに伝わるはずもなく。


今度は藤原邸の廊下で水飛沫が舞う。
卓巳にとっては二杯目の洗礼。かけた張本人は……万里子であった。



それは、万里子が宗の言葉を誤解し、藤原邸に駆け込んだ瞬間のこと。

邸内は活気づき、二階から怒鳴り合う声や女性の悲鳴が聞こえた。

万里子がオープン階段を駆け上がると、とんでもない光景が目に飛び込んでくる。


なんと、卓巳と太一郎が胸倉を掴み合い、しかも、卓巳は太一郎の体を手すりに押し付けているのだ。

万にひとつも手すりが壊れたら……怪我だけでは済まないだろう。


ちょうどそこに十七歳のメイド、佐伯茜がバケツを持ってやってくる。

ふたりを止めるためだろうか、バケツにはなみなみと水が汲まれていた。

万里子は茜からバケツを奪い取った。


「貸してね」

「お、奥様?」


万里子は大量の水を、殴り合うふたりの頭上に、一気にぶちまけた。


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