愛を教えて
「痛ってぇ。くそぉ、なんて頑固な奴なんだ」


雪音は太一郎の部屋で、彼の傷の手当てをしていた。担当ではないのだが、他のメイドが嫌がったためだ。

万里子の実家で追い返された宗も同じ部屋にいる。

邸内は異様なほど静まり返っていた。


「困りましたね。万里子様にも今度は会っていただけませんでした」


ため息混じりに言う宗の言葉を受け、


「太一郎様が善人ぶるからですよ。徹底的に極道路線を貫けばよかったのに」


太一郎に向かって、雪音はシレッと口にした。

宗までもがうなずきながら「本当に」と呟いている。


「無茶言うなよ。卓巳が本気で切れたら、殺されかねないんだからなっ」

「でも……とうとう切れませんでしたね」


雪音の言葉に太一郎は口をぎゅっと閉じた。


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