愛を教えて
そんな雪音の提案に、ふたりとも反対の声を上げた。


「馬鹿か、お前? もう新婚旅行なんて状態じゃねぇだろ。どっちも行くかよ」

「私も難しいと思います。第一、今の社長ではライカー社の代表に、手玉に取られるのがオチです」


しかし、雪音は気弱な男ふたりを一喝する。


「情けないわね、男でしょ! 行く気がないなら、行く気にさせるまでよ、仕事もやらせるのよ」

「そう簡単に、奴がヤル気になれば苦労しねぇ……うおぉっ!」


雪音の言葉を馬鹿にして、下半身を動かす太一郎の背中に、彼女は手にした湿布を叩き付けた。

痛さと冷たさに太一郎は悲鳴を上げる。


「下品な冗談やってる暇はないのよ。宗さん、卓巳様に最後の仕事をしてくれと頼んでください。ロンドンでのレセプションに出席して、無事認可が下りて契約すれば社長の役目は終了。対外的にも、新婚の奥様には同行してもらわなければならない、と話して」

「役員会はどうします? 尚子様が敦様を通じて、早速役員会に報告されましたよ。年明け早々にも藤原本社の役員が召集されるでしょう」


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