愛を教えて
尚子の名前に太一郎がビクッと反応する。


「そこは、現会長である大奥様にストップをかけていただきましょう。契約の完了を条件にすれば、役員会もまだまだ社長派が多いはずです。それは太一郎様にお願いします」

「え? いや、俺にお願いされても」

「あとは自分がしっかり引き受けるから、心置きなく最後の仕事を済ませてくれ。そう卓巳様に言ってください。あ、万里子様のことも、別れるなら指一本触れるな、と」


雪音はてきぱきと指示する。


だが、男ふたりは今ひとつ納得できないようだ。


「でもさ、そんなこと言ったらあの堅物、マジで指一本触れないぜ」

「万が一、契約が失敗して本当に社長が解任されたら……」

「契約が成功して、夫婦仲よく帰国すれば問題なしじゃないですか! それに万一のときは言ったことの責任を取って、太一郎様が社長になるしかないですね」


雪音の宣言に、青ざめる宗と太一郎であった。 


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