愛を教えて
『どんな不備かは存じませんが、卓巳さんが解決してくれると信じています』

『君も解決に一役買ってはどうだろうか?』

『私は、お勤めをしたこともない学生なので、卓巳さんのお役には立てないと思います』

『そうそう、君は二十三歳なんだね。もっと若く見える。“幼い”ではなくて、“純粋”で“清らか”だと言いたいんだ。ああ、すまない。言い忘れていた。君は見る度に美しくなる。東洋の神秘だ』

『あ、ありがとう……ございます』


こういった賛辞には慣れていない万里子は、気の利いた返事がとっさに思い浮かばない。


日本でも万里子は年齢以上に見られたことがない。

実年齢より上に見られる卓巳とでは、十歳以上離れていると思われることもある。そのため、結婚後は懸命に卓巳に合わせて、大人の女性を意識した服装を選んでいるつもりだ。

ところが、万里子が着飾るのを卓巳はあまりいい顔をしない。「君には似合わない」とけんもほろろだ。

肉感的でもなければスレンダーでもない。万里子は無個性な自分に魅力がないと思っていた。


『タクミは君を籠の鳥にしておきたいらしい。だから、仕事のことも話さない。君が自信を持って羽ばたくのが怖いんだろうな』


言い終えると、ライカーはダージリンをストレートで口に運ぶ。


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