愛を教えて
『挑発……と言われましたか? それは』
『なんだ、何も聞いてないのかい? 書類の不備を指摘して、正式調印に待ったをかけているのは私なんだよ。知らなかった?』
このとき初めて、万里子は卓巳が忙しくなった事情を知る。
ライカー社は申請書類の不備を理由に、認可の内定を取り消すと伝えてきた。虚偽記載の可能性まで指摘され、ロンドン本社長のサエキは慌てたらしい。
元々、従業員のほとんどが労働者階級のフジワラは、ライカー社からぞんざいに扱われている。
さすがに、卓巳に対してだけはそれなりの敬意を見せているが、本音は、爵位を持たぬ外国人と馬鹿にしているのが見え見えだった。
ライカー社の嫌がらせが、単にフォークナーとの確執が理由であるなら、卓巳にとっては織り込み済みだ。
だが、不確定な要素がひとつ――。
ライカーは万里子に興味を持っている。
卓巳がライカーに会うなと言ったのは、そのことを警戒したからだろう。今朝口にしたことも、他の男とはライカーのことを指していたに違いない。
だが、『挑発』という単語は穏やかではない。
『なんだ、何も聞いてないのかい? 書類の不備を指摘して、正式調印に待ったをかけているのは私なんだよ。知らなかった?』
このとき初めて、万里子は卓巳が忙しくなった事情を知る。
ライカー社は申請書類の不備を理由に、認可の内定を取り消すと伝えてきた。虚偽記載の可能性まで指摘され、ロンドン本社長のサエキは慌てたらしい。
元々、従業員のほとんどが労働者階級のフジワラは、ライカー社からぞんざいに扱われている。
さすがに、卓巳に対してだけはそれなりの敬意を見せているが、本音は、爵位を持たぬ外国人と馬鹿にしているのが見え見えだった。
ライカー社の嫌がらせが、単にフォークナーとの確執が理由であるなら、卓巳にとっては織り込み済みだ。
だが、不確定な要素がひとつ――。
ライカーは万里子に興味を持っている。
卓巳がライカーに会うなと言ったのは、そのことを警戒したからだろう。今朝口にしたことも、他の男とはライカーのことを指していたに違いない。
だが、『挑発』という単語は穏やかではない。