愛を教えて
「万里子……愛してる。僕には君しかいないんだ」

「私にもあなただけよ。サーとはダンスも踊ってません。あなた以外の人とは手も握れない、そう言って断ったから」

「本当に?」


卓巳はじっと万里子を見つめた。

瞳の色が変わる……それは本当に色が変わる訳じゃない。けれども、その言葉の意味が万里子にもようやくわかるようになった。

行き場のない熱を孕んだ瞳、今の卓巳の目は、男の本能を剥き出しにしている。そしてそれは、彼が万里子にだけ向けるまなざしだった。


「本当です。だから離さないで。私のこと捨てないって言って! ずっと妻でいていいって、そう言ってください」

「ああ、もちろんだ。離さない、君は僕のものだ」


キスの合間に、卓巳がブラックタイを投げ捨てるのが見えた。ディナージャケットを脱ぎ、カマーバンドとサスペンダーを外す。


卓巳はベッドルームに移動する様子もなく、万里子の口元が自由になった瞬間、胸の谷間に顔を埋めた。


「た、卓巳さん、ちょっと待って。ジャケットがしわになるわ。それに、ベッドに」

「ダメだ、もう待てない。この唇も……胸も……ココもすべて僕だけに許されたものだ」


< 684 / 927 >

この作品をシェア

pagetop