愛を教えて
万里子の反応が変わった。

卓巳はハッとして身体を起こし、慌てて立ち上がる。


「すまない! 悪かった。こんなつもりじゃ……つい、調子に乗って」 


何度謝っただろう。
どうしてもっと余裕を持てないのか。万里子の反応を確かめながら進めて行けないのか。経験のなさに、卓巳は唇を噛み締める。

だが、万里子はこれまでと違い、卓巳に抱きついた。


「違うんです。あなたが好きだから、どんなふうにされても私は平気。ただ、ビックリして……。あなたにされていやなことはひとつもありません。私は卓巳さんを愛してるから」

「僕もだよ、万里子。僕も君を愛してる。こんなふうにしたいと思うのは、君だけだ」


ふたりは、ひしと抱き合った。まるで今にも溺れそうなほど、互いを必要としていた。


そして、最も相手を身近に感じる方法で愛し合うことを選んだ。

卓巳はその部分に彼女を感じるだけで、本当に結ばれている錯覚に陥る。重なる部分から幸福感がじわじわと全身に広がり、卓巳の不安を少しずつ消していく。


しだいに、卓巳の下にいる万里子の息が荒くなった。

ウォッシュルームの壁に彼女を押しつけたときのようだ。

卓巳がそう思った瞬間、万里子は切れ切れに声を上げ、卓巳の二の腕に爪痕を残した。


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