愛を教えて
だが、その言葉に卓巳はむきになって言い返す。


「ああ、そういえば、そういう設定だった。でも、言わせてくれよ。真面目に聞いてくれ。その……避妊とか、僕の人生であり得ない事態に遭遇してなんの注意も払わなかった。“だから僕の責任だ、結婚しよう”って一度言って見たかったんだ。――笑うなよ。もう結婚してるって突っ込みはなしだ」


卓巳は本当に嬉しそうだ。

そんな卓巳を見ていると、万里子は涙が堪え切れなくなる。


「そうね……でも、でも、私に、は」


否定しようとした万里子の唇を卓巳はキスで止めた。


「泣かせるために言ったんじゃない。万里子、君の可能性はゼロじゃないだろう? 今度は僕が、君に奇跡を起こしてみせる。もう一度、検査してもらおう。四年以上経ってるんだ。もし、まだ可能性が低かったとしても、治療方法があるはずだ。必ず、君を母親にする! 僕を信じてくれ」


卓巳の愛は本物かもしれない。

だがそれなら尚のこと、無駄な努力をさせてしまうのではないか?


ほんの数日前まで、卓巳をどん底に追い込んだ苦悩――あまりにも愛するがゆえに、これ以上愛してはいけない。

卓巳が彷徨った迷宮に、万里子もまた足を踏み入れることになってしまう。


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