愛を教えて
「まったく! なんだってジェームズは携帯でかけて来るんだ!」


このとき、卓巳はライカーを追い詰めていた。

元々、ライカー社の急激過ぎる成長に目をつけ、調査中だった。予想どおり、ライカー社は強引が過ぎて違法スレスレ、いや、違法を疑われる行為があった。その証拠さえ握れば、認可を出させることは容易になる。

ライカーにとって何より大事な貴族の称号。それと引き替えにしてまで、万里子を得ようとはしないはずだ。

だが、卓巳に弱みを握られそうな状況を、ライカーも察知したらしい。そして、そうなる前に万里子に対して乱暴な手段を取りそうだ、との情報を入手した。


万里子は英国でのハネムーンを楽しみにしていた。契約を済ませたら日本に連絡して滞在を延長しよう。せめて三日、いや二日でも万里子の望む場所に連れて行ってやりたい。卓巳はそんなことを考えていた。

しかし、それにこだわって万里子に何かあっては目も当てられない。

今、万里子を英国内に置くのは危険だ。ライカーの手が届かない国外に退避させよう。そう決めて、飛行機のチケットを手配し、ロンドン本社トップのジェームズ・サエキに手紙を持たせた。

万里子に対する指示はすべてその手紙に書いた。日本語で書かれた手紙なら、ちょっとした暗号になる。それに万里子なら卓巳の筆跡がわかるはずだ。

卓巳はリッツの支配人にも、ジェームズを部屋に通してもいいと伝えた。


< 707 / 927 >

この作品をシェア

pagetop