愛を教えて
ジェームズの携帯電話で万里子と話して約二時間が過ぎた。

ヒースロー空港に着いたら公衆電話から連絡を入れるように言ってある。だが、肝心の連絡は一向に来ない。


そのとき、届いた調査報告書を手に、ジェイクが卓巳の部屋に飛び込んで来た。


『社長! 調査が完了しました!』


こうも都合よく先手を打たれ、正式契約目前に虚偽記載にまで発展するのはおかしい。

万里子のことは関係なく、最初から契約が予定どおりに進まないよう、準備していたようだ。

卓巳はジェイクに命じて、ロンドン本社内にいる内通者の存在を探っていた。

ジェイクは卓巳の期待に応えてよく働いた。見た目は軽薄で頼りなく思えるが、中々機転も利いて優秀な頭脳をしている。


当初、ジェイクは担当部門の社員を中心に調査を進めていた。しかし成果は上がらず、卓巳の許可を得て重役以上の代表取締役まで調査の手を広げる。


『詳細の確認にまでは至ってませんが……これはちょっと……大変なことになりそうです』


ジェイクの顔は青ざめていた。そんな彼を見て、卓巳は瞬時に嫌な予感を覚える。


『誰だ?』

『ロンドン本社社長……ジェームズ・サエキです』


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