愛を教えて
万里子はよろけながら、シッティングルームに姿を見せた。

真っ白なバスローブの腰紐は結んでおらず、懸命に手で合わせている。

卓巳は一瞬で万里子の身に何があったのかを察した。


はらわたが煮えくり返る、とはこのことだろう。

すぐにもライカーに飛びかかり、殴り殺してやりたいと思った。だが今は、万里子を取り戻すことが先決だ。


「万里子……遅くなってすまない。迎えに来た、一緒に帰ろう」


卓巳は激情を伏せ、精一杯の優しい声で万里子に語りかける。

しかし、彼女は一度も卓巳を見ようとしない。小刻みに震えて視線は背けたままだ。


『どうしたんだい、マリコ? ああ、私を受け入れた身体を恥じているのかな? 確かに、清楚な君からは想像もできない激しさだったね。驚いたよ。私の言葉が嘘だと言うなら、反論してみたまえ』


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