愛を教えて
しばらくすると寝室はひっそりと静まった。


「万里子、すぐに楽になる。大丈夫だ、ゆっくりお休み」

「たくみさん? たくみさん……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい」

「君のせいじゃない。君が謝る必要はどこにもない。君は何も悪くないんだ」


卓巳は万里子の髪を撫でながら、同じ言葉を何度も繰り返す。それでも万里子は意識が落ちる寸前まで、涙に震える声で「ごめんなさい」と謝り続けた。


『あとは頼む』


小さな声でソフィに伝え、卓巳はベッドから離れた。



卓巳が顔を上げると、ドアにもたれるようにライカーは立っていた。言葉もなく、目は最大に見開かれている。

そんなライカーの姿に、卓巳の胸から灼熱の溶岩が噴き上げた。


『起きている間はずっと泣いている。私の声に気づくと、さっきのように謝り続ける。彼女に非がないことは、貴様が一番知っているはずだ。なのに、謝り続けるんだ!』


卓巳はライカーの胸倉を掴み上げ、壁に叩きつけた。


< 757 / 927 >

この作品をシェア

pagetop