愛を教えて
オックスフォードストリートと書かれた大通りを左に折れ、大きなデパートの裏手にタクシーは停まった。


「ここは?」

「ウォレスコレクション。美術館だが中庭のカフェがお気に入りでね。仕事の合間に立ち寄るんだ」


ウォレスコレクションの名前は万里子にも聞き覚えがある。

ロンドンの観光名所でトップテンに入る場所だろう。レンブラント、ルーベンス、ベラスケス……十七世紀に活躍した画家の作品を多く所蔵している。

名だたる画家の中で万里子が一番興味を惹かれたのはフランス・ハルスであった。

人物画、それも笑顔の人物を多く描いたという。ハルスの騎士の絵を、万里子は見たいと思っていた。


「美術館も見られるのでしょう?」

「ああ、だがまずは腹ごしらえだ。英国名物フィッシュアンドチップスも結構だが……フレッシュトマトスープが最高なんだ。君の胃も驚かないと思うよ」


万里子は卓巳お勧めのトマトスープとマッシュポテトを注文する。

スープは、完熟トマトを潰したばかりのような、真っ赤な色をしていた。濃厚だが酸味があるので胃にもたれることはなく栄養満点だ。柔らかくて仄かに甘いマッシュポテトと共に、万里子の空腹をゆっくりと満たしてくれた。


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