愛を教えて
万里子にホテル名を教え、ここが卓巳の所有で、卓巳専用の部屋であることも教える。


「それで、窓の外にテムズ河が流れているんですね。でも……あのままふたりを放っておいて構わないんですか?」


万里子はウォッシュルームのほうが気になるらしい。


「あの声から言っても、ジェイクが無理に、という感じではないからね。僕らの寝室の様子を窺ってるうちに、ふたりともその気になったんだろう。勤務中に、と怒るべきかもしれないが……」


ジェイクに午後の予定を確認しておきたかったが、どうやら難しそうだ。

見た目は軽薄だが、ジェイクの中身は素晴らしく古風な男だ。社内でも堅物で通っている。

一方、ソフィも教会での教えを守り、慎ましく暮らす女性だ。


「そんなおふたりなら、余計に止めて上げたほうが」


ウォッシュルームのドアを今にも叩きに行きそうな万里子を引き止め、卓巳は彼女が手にしたままのコートを、肩にかけてやった。


「いや、もう止まらないさ。あの調子なら、充分に最終段階まで進んでるよ。それに、一ラウンド目とも限らない」

「でも、こういったことは女性にとっては重要なことですし……申し訳なくて。だって私たちのせいなんでしょう?」

「だがふたりとも大人だ。いや、そんな顔をしないでくれ。できる限りのフォローはするつもりでいる。さあ、僕たちは出かけよう。目の前で聞かれたことを知ったら、ソフィも傷つくだろう。まあ、おあいこのようなものではあるが」


卓巳はジェイクに尋ねるのを諦め、デスクの上にメモを残してふたりは部屋をあとにした。


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