愛を教えて
「社長……今、何時かご存じですよね?」


電話の向こうから眠そうな宗の声が聞こえる。


「夜の九時を回った辺りだ」

「こちらは朝の六時過ぎです。上司がハネムーンから戻って来ないので超過勤務続きで、昨夜も午前三時にベッドに入りました」


確かに細かい調整から仕事の対応まで、留守中のすべてを宗に一任してある。その予定を四日間ずらし、別に組み込むのは骨の折れる作業には違いない。


「それはすまない。だがまさか、それ以前は違うベッドにいた、とか言うんじゃあるまいな」

「…………新婚旅行はいかがですか?」


微妙に話を変える宗に、相変わらずな奴だ、と苦笑いを浮かべる。


「ああ、今夜が最後なのが残念だ」

「社長! また帰国を延ばすなんておっしゃいませんよね?」

「わかってる、明日の便でこっちを発つ」

「どうかなさいましたか?」

「何がだ」

「楽しい新婚旅行の真っ最中でしょう? そんな不機嫌な声は似合いませんよ」


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