愛を教えて
あずさは嘘八百を並べ立て、最後に付け加える。


「あら、嘘だと思われるなら、尚子様にご確認くださいませ」


あずさの言葉に驚き、隆太郎は尚子の元に駆け込んだ。



「卓巳さんに男性機能がないからといって太一郎に言い寄るなんて。いったい、お嬢さんにどういう躾をなさったのかしら? 過去のことはお気の毒ですけれど、それで女性としての慎みを失ってしまわれたのね。やはり、男親だけでは娘の教育はできませんわね」


このときの尚子は、卓巳を追い出すことに成功したつもりだった。年明け早々にも太一郎が次期社長に選ばれる。

太一郎は万里子に執着しているようだが、卓巳の妻になった女など、息子の嫁にはしたくない。

追い出すチャンスとばかり、尚子は言葉を重ねた。


「卓巳さんもよほどショックだったんでしょうねぇ。社長の座を降りて、藤原の家も出て行かれるとか。そうそう、間違ってもお嬢さんをうちの息子に近づけないでくださいね。お父様が恥というものをご存じならよろしいのですけれど」


その言い草に隆太郎は憤然として言い返した。


「確かに、男親だけでは行き届かなかった点はあるだろう。だが、万里子はこの上なく慎み深い娘に育ってくれた。万里子はどこに出しても恥ずかしくない娘だ。それを……こんな侮辱は我慢ならん! いいか、貴様の馬鹿息子こそ万里子に近づけるなっ。恥を知らんのは貴様らのほうだ!」


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