愛を教えて
隆太郎が怒って当然だ。

とくに尋ねた訳ではないが、万里子は無垢なまま卓巳に嫁いだはずだ。だからこそ、万里子を妻にした、とその日のうちに卓巳は隆太郎に頭を下げたのだろう。


卓巳が床に手をつき、万里子を妻に欲しいと願ったのだ。

会長の許しを得られないときは、藤原を出て千早の家に入る、とまで言った。

その真摯な言動に、隆太郎は胸を打たれ、結婚を許したのである。


隆太郎は家に戻り、忍にことの顛末を話して聞かせた。


「まったく! 人を馬鹿にするにもほどがある。何様のつもりか知らんが、くだらん言いがかりで万里子を貶めようなど。あんな連中の話を鵜呑みにする卓巳くんも卓巳くんだ!」


口では強気なことを言ったものの、隆太郎は今にも倒れそうだった。

娘を信じたい。だが、もし噂が真実なら。万里子の身に何かあったのだとしたら……。

そんな隆太郎の目に、青ざめ口ごもる忍の姿が映った。

不審に思った彼は忍を問いただし、万里子が隠し続けた四年前の真実を知ってしまう。


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