愛を教えて
「ゆ、雪音……さん、それはちょっと」


宗がビックリして止めに入るが、雪音は無視して卓巳を怒鳴りつけた。


「なんて酷いことをおっしゃるんですかっ!? 自分の子供が癌と同じなんて。最低だわ!」

「雇い主にこんな真似をしてただで済むと思ってるのか!」


万里子には弱いが、雪音に向かっては重役も震え上がるような声で叱責する。


だが、雪音の腹の据わり具合も半端ではない。


「旦那様は前もそうだったわ。自分では何もできないからって、勝手に判断して終わらせようとする。今だってそう、子供が授かったのに、喜んでもくれないなんて!」

「話を聞いてないのか!? 今が喜べる状況だと思うか?」

「よかった、嬉しい、ありがとう、おめでとう……何ひとつ言ってないんじゃないですかっ?」

「だからなんだ!? 言わなくても思ってる。それとも、万里子を抱えて邸中スキップでもしろと言うのか!」


ふたりとも本気で怒鳴り合い、肩で息をしている。


卓巳の胸に警告ランプが点った。

万里子の身体をほんのわずか気遣ったとき、彼女が見せた表情と、この雪音の言葉には繋がるものがあるのではないか、と。

ただ、苛立ちが目隠しをして、卓巳には答えが見つけられない。


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