ケイヤク結婚
「あっ! 気にしなくていいんだよ。そんな暗い顔をしないで。私、今は幸ちゃんと幸せだから」

 理沙ちゃんがにこっと笑った。

「ん。ごめんね。なんて言ったら良いのかわからなくて」

「私ね。綾乃さんのそういうところが、擦れてなくて大好きなの」

「え?」

「人生30年も生きていれば、ある程度の善し悪しをわかっててさ。変に計算高くなるじゃない? こう言えば、人は喜ぶ…とか。私、そういうの嫌いなんだ。だから30年、生きててもピュアな反応をする綾乃さんが好きなの」

 理沙ちゃんが、鞄を椅子の上にドサッと投げると笑顔を見せた。

 なんだか……私より、理沙ちゃんのほうが大人に見える。

 まだ20歳なったばかりで、私より10歳も年下の女性なのに。

 それだけしっかりしているんだと思う。凄いなあ。

 私もしっかりしなくちゃ!
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