ケイヤク結婚

―大輝side―
「まさか僕まで呼び出されるとは思わなかったよ」

　ジーパンにフリース姿の君島幸介が、パチパチとパソコンを打ちながら文句をたれた。

「使えるものは使う。今は、選んでいる暇は無い」

「でもさー。僕は全く部署が違うんだよ？」

「社長の息子なんだ。少しくらい会社に貢献するといい」

「少し……って。僕は毎日、会社に貢献してると思うけど」

「口はいいから、黙って指を動かしてくれ」

「わかったよ」

　幸介が「あー」とため息を零しながら、パソコンの画面を細い目で眺めた。

　午後１０時半。全く、終わりが見えない作業に、明日の朝までには終わるかどうか……と気弱になる。

　絶対に終わせなければ、俺の評価に繋がる。結果が全ての世の中だ。

　経緯はどうあれ、明日の会議は完璧にやりすごさなければいけない。